[ 霊犬伝説 ] しっぺい太郎と早太郎
[信濃の光前寺・霊犬 早太郎(はやたろう)]
しっぺい太郎と早太郎って?
悉平太郎(しっぺいたろう)と言えば、静岡県磐田市のイメージキャラクター「しっぺい」くんだね。このキャラは、見附天神(磐田市)に伝わる霊犬伝説「悉平太郎(しっぺいたろう)」をモチーフにしたんだよ。
この伝説は、毎年、見附天神の祭りに生きたまま若い娘さんを、神に供えるしきたりがあった。みんな、祭りの度に悲しんでいた。ある時、見附(磐田市)を訪れた旅のお坊さんがその話しを聴いて、信濃の国の悉平太郎を紹介してくれたんだ。こうして、悉平太郎に怪物を退治してもらったんだ。
この悉平太郎は、光前寺では早太郎と呼ばれていて、信濃の光前寺には早太郎さんのお墓があるんだよ。これがご縁で磐田市と駒ヶ根市は友好都市になっているね。
[磐田の矢奈比賣神社・悉平太郎(しっぺいたろう)]
霊犬伝説の伝承のポイント
しっぺい太郎、早太郎に代表される犬が怪物を退治するお話しは、どうやら各地に存在するようです。
こうした似たようなお話しが各地に伝承されていること自体が不思議です。その土地の固有の伝承として子どもの頃に、驚きをもって聴いて、その感動が心に残っているのです。それが、歳を重ねるにしたがってどこにでも同じ話が有るって言われてもねぇ。心の感動の灯火が消えていくように感じてしまうのです。
さてさて、各地で伝承される霊犬伝説の伝承のポイントは、おおよそ以下の4点に分類される。
① 怪物が、人身御供を要求。
② 怪物が、自身の弱い点を、自ら漏らす(または、対処法のお告げを受ける)。
③ 犬が、怪物を退治する。
④ (あなたの思ったポイントは?)
各地の霊犬伝説
人身御供にされそうな娘を、神のお告げやお坊さんのアドバイスによって、怪物を退治する犬のお話し。各地に伝承されている伝説のある所をまとめてみました。
- [長野県駒ヶ根市] 光前寺・霊犬早太郎
- [静岡県磐田市] 矢奈比賣神社・悉平太郎(しっぺいたろう)
- [能登・石川県七尾市] 大地主神社 山王社・しゅけん
- [兵庫県篠山市] 大歳神社・鎮平犬
- [山形県天童市] 妙見神社・べんべこ太郎
- [青森県三戸郡] すつぺ太郎
など
霊犬伝説の来た道?
この伝説の似たようなお話しをみてゆくと、
「今昔物語」にみえるは、美作(岡山県東北部)の中山(ちゅうざん)神社での娘の生贄と頭(かしら)の身丈7尺の大猿と百の猿、この大猿軍団を二つの犬が退治するというお話しである。
さらに、この美作のお話しは、どこからと辿っていくと、怪を志(しる)した小説、志怪というジャンルの志怪小説集である干宝著の『捜神記(そうじんき)』に辿り着くのもありなのかもしれない。この志怪が流行したのは中国六朝時代。東晋の歴史家千宝が記したこの『捜神記』は六朝志怪の代表作とされる。
参考資料など
- 『今昔物語集・本朝世俗部二』巻第26 本朝 付宿報, 新潮社, 昭和54年。
「美作の国の神、猟師の謀りに依りて生贄を止むる語、第7」pp. 130-137。
「飛騨の国の猿神、生贄を止むる語、第8」pp. 137-154。 - 『今昔物語集③・本朝世俗部二』巻第26 本朝 宿報に付, 小学館, 昭和54年。
「美作国神猟師依謀止生贄語第七」pp. 491-498。
「飛騨国猿神止生贄語第八」pp. 498-513。
- 竹田晃訳, 千宝著『捜神記』株式会社平凡社, 2000年1月。
巻19 440「大蛇を退治した娘」pp. 569-572。